つくり手インタビュー some-zome

ブランド  some-zome(ソメゾメ)
つくり手  株式会社内田染工場 内田光治 
職業  染色加工業
出身地  東京都文京区
活動拠点  東京都文京区
趣味  ゴルフ・クラシック系のコーラス・ポップス系おやじバンドのボーカルなど
WEB  http://www.some-zome.com/
Facebook  @somezome

Q. つくり手ご自身の自己紹介をお願いします。

今年110周年を迎えた株式会社内田染工場の3代目社長です。
若い頃からファッションに興味がありました。
流行最先端のファッションに常に関わることができる環境で、
日々やりがいを感じながら、
楽しくお仕事させていただいています。

Q. 活動拠点について

生まれも育ちも文京区。
現在の会社がある場所で生まれ育ちました。
人生で一度も文京区以外に住んだことがありません。

工場の真ん中に家があったので、
現在染色機が多数置いてある場所が家族の居間でした。

居間から縁側を臨んだ先に小さな庭がありました。
庭の池では鯉や金魚を飼っていましたが、
現在その場所はビーカー染めの試験室になっています。

自分が子どもの頃は、
当時主に染めていた靴下の中に埋もれて
生活しているような感じでした。

Q. この仕事をはじめたきっかけを教えてください。

工場の中で生まれ育ちましたので、
子どもの頃から当たり前のように仕事を手伝っていました。
何の迷いもなく、自然にこの仕事を引き継ぎました。

大学卒業と同時に、他に就職せずに
すぐにウチの会社に入りました。
今となっては、ほんの数年でも就職して
社会勉強できれば良かったと後悔する部分もあります。

けれども、当時は、
両親ともうひとり職人がいるだけの
とても小さな規模でしたので、
自分がすぐに入らないと終わってしまうという
危機感がありました。
どちらが良かったかはわかりません。

Q. 内田染工場についてご紹介をお願いします。

当社は創業110年を迎えます。
戦時中には、先祖のルーツである群馬県桐生市へ疎開して
靴下製造業を営んでいた時期があったそうです。
(先祖は、桐生で8代続いた呉服屋「内田呉服店」を
営んでいたということです)

東京に戻った時には、
以前の設備はすべて焼失してしまっていました。
父は、ゼロからの再出発を経験しました。

まずは、関連する靴下の染色から始めたということです。
私が入社した当初も、靴下の染色が多かったです。

時代の流れもあったと思いますが、
自分が洋服全般に好奇心が強かったので、
自然と加工する商品がアパレル衣類中心に
移り変わって行きました。

Q. 内田染工場では現在どのような業務を行っているのでしょうか。

主にアパレル相手に衣類を染めたり洗ったりして、
製品に付加価値をつける加工を行う工場です。

染色というと、
普通は糸や生地の染めを頭に思い浮かべる方が多いと思いますが、
弊社はすでに製品になったものを
まるごと染める事をメインにとしているのが特徴です。
いわゆる「製品染め」という分野です。

例えば、お客様が白いTシャツをたくさん作っておいて、
今週人気があって売れた色を、すぐに染めてフォローする
「QR対応(※)」が挙げられます。
( ※ クイックレスポンス、店頭の動きに迅速に対応すること)

また、
在庫で残ってしまった派手な柄の商品を黒に染め替えたり、
部分的に柄を残してその柄を活かしたカタチで
全く違う商品に生まれ変わらせたりすることもあります。

あるいは、
形や風合いを変化するように加工することもあります。

製品をまるごと染める事によって、
色だけではなく全体に縮みが生じます。
縮むことにより形や風合いが変化して、
硬くなったり、柔らかくなったり、いびつになったりします。
その変化を「面白い」「可愛らしい」と捉えられるように加工します。

現在、パリコレや東京コレクションなどを手がける
著名デザイナーズブランドからのお仕事を多く受注しています。

最近では、
アーティストやスタイリストからの依頼で、
演劇やテレビCM、コンサートステージの衣裳の染めを
手がけるケースも増えています。

Q. 現在はどのように活動していますか。

アパレル会社からの委託加工を請け負いつつ、
当社を含む東京都内の染工場4社が協力して立ち上げたブランド
「some-zome」としても活動しています。

染色の技術を活かしたデザインで、
Tシャツをメインに企画製作・販売しています。

Q. some-zomeを作ったきっかけを教えてください。

我々が所属する東京都繊維染色協同組合の事務所は、
墨田区両国にあります。
2013年に東京スカイツリーができた時に、
そこに墨田区の地場産業を紹介するスペースができるので、
利用しませんか?というお声掛けがありました。

そこで、有志が手を上げて
ブランド「some-zome」を立ち上げることになりました。

これまでは、
アパレル相手の委託加工が中心でした。
どうしても、相手からの受注を待つ
「受け身」の商売になってしまいます。
自分のペースで仕事ができない辛さや不安がありました。

また、縁の下の力持ちとして、
アパレル業界を支える裏方で長年やってきたため、
自分たちの存在をアピールしたいという気持ちもありました。

そんな思いは、同業者の他の染工場さんたちもみんな持っていて、
くすぶった不満を抱えていた中で、
このようなきっかけから自分たちのブランドを
スタートすることになりました。

Q. ものづくりを行ううえで、どのような点にこだわって作っていますか。

some-zomeの商品は、
日本製の肌触りの良い素材を使用しています。
デザインは、「江戸」をテーマに和モダンを意識しています。
染色加工の様々なテクニックを散りばめた、
日本の伝統美を感じていただけるオリジナル商品となっています。

こだわっているのは、
「東京の染めを盛り上げたい」という
心意気をアピールすることです。

ひとつの商品を作るのに、
プリントが得意な染工場がプリントしたモノを別の染工場へ持って行って、
今度はそこの染工場が得意な絞り染めやグラデーション染めなどを行って・・・
という風に、
1枚の製品を完成させるのに、
文字通り数社の染工場が協力して作り上げています。

2016年度には、
商品が「すみだモダン」に認証されました。
ソラマチ5階のすみだまち処にて常設販売しています。
毎年6月頃には、同店でのイベントにて新作を発表しています。

Q. 作りたいもののアイデアはどのように思いつきますか?

関わる4社が毎月集まってミーティングしています。

常に最先端のファッションに触れている私達が、
そのトレンドを意識しつつ、
ブランドのイメージにマッチしたモノを繰り返し試作します。
そうして厳選した良いモノだけを商品にするようにしています。

Q. 制作するうえで大変なことはありますか。

some-zomeを4社でやるということは、
ライバル会社が協力するということになります。

それぞれのスタンスが微妙に違って
まとめるのに苦労した時期もありましたが、
経験を重ね、乗り越えて、
さらに深い関係を築きつつあるところです。

Q. 写真の作品のタイトルと、作品に込めた思いやエピソードを教えてください。

「防染プリント×グラデーション染め」
「プリントとプリントの重ね」
2018年10月に上海で行われた展示会に出展した時の写真です。
染めると浮き出る特殊なプリントと、
境目がなく絶妙に変化していく職人技のグラデーション染めを
組み合わせた、他にはない商品となっています。

Q. もうひとつのブランド「小石川染色工房」について教えてください。

some-zomeとは別に、
弊社のオリジナルブランド「小石川染色工房」を作りました。

小石川染色工房では、
「板締染め」という技法を中心に
バンダナやストールを作っています。

板締め染めは、古くは奈良時代から伝わる染色技法の一つで、
生地をたたんだ状態で、一対の板に挟んで染める技法です。
板で挟んだ部分だけが染まらずに、
独特な柄が生まれます。

1枚ずつ手作業で行うために、
板の隙間からほのかな滲みが生まれます。
プリントとは違う独特な趣があります。
一点一点異なる味わいを楽しんでいただきたいです。

今回のイベントがちょうど桜の咲く季節ですので、
小石川染色工房の「桜染め」の商品も販売する予定です。
当社が得意とするボタニカルダイで、
桜の花びらを煮出して抽出した染料で染めます。
お楽しみに!

Q. 今後の展示などの予定があれば教えてください。

①2019年5月1日~8日 日本橋三越
東東京モノヅクリ商店街の一員として出展します。
②2019年6月7日~19日「some-some展」東京スカイツリーソラマチ すみだまち処

Q. 今後やりたいことや目標を教えてください。

①美術館のミュージアムショップなどで常設販売の出店を増やしたい。
②海外へのアピール。
③常に進化する加工技術に伴った新商品の開発。
④まだ詳細は明かせませんが、新たな試みを企んでいます!

Q. 最後にひとことお願いします。

取引先のアパレルの為にものづくりを行う
生地屋や縫製メーカーなどは昔から墨田区に多かったので、
墨田の方々とは非常に深いお付き合いをさせていただいています。
今も両国界隈に出没することが多いです。

すみだ北斎美術館のある場所も馴染みの場所で、
とても親しみを感じています。

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伝統を伝える職人技の結晶とも言える、
some-zomeの品々。
ぜひ会場にてご覧ください!